【エレナ】
「ねー、どうしていつも火曜日に来るんですかあ」
「君の出勤日が火曜と金曜だからじゃないか」
「金曜日に遊んで帰ると怪しまれるってこと?」
「はは。まあそうだね」
「土日とかは家族サービスなんですか?」
「どうしたの、急に」
「なんとなく。ねえ、志度さん、目黒でしたよね」
「うん? 話したかな。よく覚えてるね」
「仕事ですから。ね、あたし、今のところ辞めるかも」
「そう。寂しくなるなあ」
「ほんと? そう思う? お店変わっても来てくれる?」
「もう決まってるの?」
「うん、六本木。内緒にしてね」
「行くよ」
「ほんと? ほんとに? 約束してくれる?」
「するよ。名前は同じ?」
「今度はメグミだよー」
「え?」
「なに?」
「いや。家内と同じ名前だ」
「……そうなんだ。じゃあ変えるね。気になっちゃうだろうし」
「いいよ、別に」
「変えるよ」
「そう」
「あたしね、本名は澄香って言うの」
「きれいな名前だ。どうしたの、急に」
「ううん。なんとなく」
「彼氏がいるんだろう?」
「……いないよ。今はいないの。ばれちゃって」
「お父さんの借金っていうのは本当の話?」
「うん。……話したっけ。よく覚えてるね」
「こういう仕事のことを気にしない人を彼氏にした方がいいんじゃないのか。隠し続けるのは
大変だろうし。君にはお金を稼がないといけない事情があるんだから」
「気にしない人なんていないよ。最初はそう言ったって、だんだんうるさくなってくるもん。バカ
にしてるの判るし」
「そういう下らない男は君の方から振りなさい」
「……ね、志度さん」
「うん?」
「外でも会ってくれる……?」
「エレナちゃん」
「お金とかは全然要らないから、たまに……会ってくれるだけでいいから」
「僕より若くていい男なんてたくさんいるだろう」
「いないよ。そんなのいない」
「妻子のある男なんかに時間を取ったって、君にいいことはないよ」
「言ってみただけ。ごめんね、気にしないで。ごめんなさい」
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